コロナ禍により自宅で過ごす時間が増え、今、「快適な住まい」の価値が見直されています。「住まい」を提供する仕事にも様々ありますが、その中でも今回は不動産会社とハウスメーカーを比較!座談会形式でお送りします。

【参加者プロフィール】

小林 和晃(Kobayashi Kazuaki)
取締役専務/採用責任者。高校卒業後、大工としてキャリアをスタート。創業者である社長と共にサンリーホームを牽引。

小林 律子(Kobayashi Ritsuko)
石川高専で建築を学んだ後、富山のハウスメーカーに就職し7年半勤務。結婚を機に石川に移住し、同時にサンリーホームに入社(2014年)。建築部門の立ち上げに関わる。

田中 友規(Tanaka Yuki)
石川高専の建築学科を卒業後、施工管理会社に就職。2015年にサンリーホームに転職し、現在は建物管理建築部で主任チームリーダーを務める。

「深く」寄り添うハウスメーカー、「広く」寄り添う不動産会社。

――最初に、ハウスメーカーと不動産会社の役割をざっくりと整理してみましょう。

ハウスメーカー:個人のお客様向けの住宅を作ることを目的とし、住宅の設計・施行を行う。
不動産会社:主に建築後の建物や土地の流通・管理・賃貸・売買を行う。

――会社ごとに、上記した事業以外もやっていたり、あるいは一部やっていなかったりと様々ですが、大雑把にはこういった違いがあります。

――では早速座談会を始めましょう!まずはそれぞれの業界で、どのようなお客様の対応をすることになるのか、特徴はありますか?

小林律子さん:私は前職で住宅メーカーに勤務していましたが、注文住宅を建てたいというお客様は、すでに土地は持っていらっしゃる方が圧倒的に多かったです。また、「住まい」に強いこだわりを持っておられ、注文住宅を通して住まいへの夢を叶えたいという方ももちろん多かったですね。サンリーホームに移ってから対応させていただくお客様は、「賃貸物件を探している」人はもちろん、「土地を探したい」「家が欲しいが、中古か新築か迷っている」という人もいらっしゃって、バリエーション豊富です。まれに「賃貸を探しに来たけれど、家を買うことにした」という方もいらっしゃいますね。

小林専務:不動産会社にやってくるお客様は、何から始めたらいいか漠然としているケースが多いですね。あと、基本的な仕事のスパンは不動産会社の方が短いです。注文住宅を建てる場合は、どのハウスメーカーにするか決めるまでも長いし、決めてから契約するまでに数ヶ月、建て始めるまでにまた数ヶ月、完成までに数ヶ月ということが普通です。不動産会社だともっと短くサイクルが回っていきます。

――お客様の予算の大きさや、契約金額といった面では違いはありますか?

小林律子さん:ハウスメーカーでも不動産会社でもそれなりに幅広いご予算のお客様のご対応をすることにはなると思います。ただ、お客様の予算が低かった場合に、自分たちが講じられる手段の幅広さという意味では、不動産会社であるサンリーホームに移ってきてからの方が圧倒的に色々なことができていると感じています。例えば注文住宅を売る会社でお客様の予算が低かった場合には、建てる家の坪数を減らすこと以外、大きく予算を下げるために出来ることがほとんどないんですよ。その点、不動産会社に来ていただければ、安い土地を探したり、ご希望に沿うような中古物件を探してきたりなど、お客様が予算に無理をしなくても満足できる家に住んでもらうためのアイデアは色々とあります。

小林専務:ただ、不動産会社でもどれくらい事業の幅広さがあるかで手札も変わってくるので、一概には言えないかもしれません。当社は不動産の分野を大体網羅できているので、それができる面はあります。先ほど申し上げたように、不動産会社にご来店の時点ではまだ漠然とした望みしかないお客様も多いので、お話を聴きながら色々とご提案することで「そんな選択肢もあったのか!」「目からうろこ!」と喜んでいただけることもあります。

――サンリーホームの仕事は、注文住宅ほどには住まいへの細かなこだわりに一つずつ向き合う仕事ではないものの、予算や立地も含めて様々なお客様のご事情に幅広く沿うようなご提案ができる側面はありそうですね。田中さんは、前職は施工管理会社で、今はサンリーホームの自社建築を手掛けておられますが、2つ比べてサンリーホームの特徴や違いを感じることはありますか?

田中さん:当社は建売にしろアパートにしろ、「これから商品を作っていく会社」というのが一つ大きく際立っているんじゃないかなと思います。今まで分譲を打ってきた中で、「このエリアのお客様にはこういうニーズがある」とか「この価格帯で、こんな設備が喜ばれる」とかの情報を大体掴んでいるので、そこを特化した商品をこれから建てていくことができるのは特徴であり強みだと思っています。

小林律子さん:田中さんは根っからの建築好きですよね。この仕事は心の底から「建築が好き!」という人じゃないとなかなかできないし、続かない仕事だとつくづく思います。新しい建物に入るたびに「ここってどう作られてるんだろう……」って検分しちゃうような。田中さん、昔は裁判所とか建てていましたよね。

――お客様の年齢層やライフステージに違いはありますか?不動産会社のお客様は若いような印象もあるのですが。

小林専務:賃貸がメインの不動産会社だとその傾向はあるかもしれません。これも会社の事業分野によりまちまちでしょうね。当社は建売や売買も扱っているので、お客様のライフステージや年齢層も幅広いんじゃないかと思います。例えば私が先日戸建てをご紹介したお客様は、実は10年前に二十歳の時に一人暮らし用の賃貸物件をうちで借りてくれた方だったんです。そこから引っ越す時も当社をご利用くださって、さらにその後結婚して子供が生まれたから戸建てに……と今回で3度目のご依頼でした。お客様の人生のいろいろなステップに関われる喜びを実感したところです。

見えないものを売るか、見えているものを売るか。

――では、働く側から見て、それぞれの業界で積める経験にはどんな違いがありますか。

小林律子さん:ハウスメーカーだと、お客様の意図を汲み取って形にしてあげる、リクエストにお応えする面白さがあります。また、お客様と関わる期間が長いので、絆が育まれるのも醍醐味だと思います。5、6ヶ月は一緒になって一軒の家に取り組みますしね。一方で、建売住宅や自社建築アパートの場合は、個別のお客様のご要望を聞いて建てるのではなく建築士がベストだと思う住宅を建てます。地域性に合った間取りや最近の入居者のニーズ・設備など、建築士と営業部が密に連携しながら会社一丸でつくり上げる戸建てやアパートになりますので、最大効率が良いとも言えます。お客様にはその実物を見ていただいた上で、気に入っていただければ契約になるし、気に入らなければそこまで。関わる期間は短いですが、こうした建築士目線のベストな提案であるという点と、「既にある家を見てご判断いただける」という点ではシンプルで誤解の生じにくい商売だなと思っています。そこは個人的にストレスが少なくて気に入っているポイントです。

――改めて、注文住宅のハウスメーカーというのは「まだ存在しないものに対して数千万円のご契約をいただく」という、結構ハードな側面がありますよね。

小林律子さん:そうですね。だからこそ、ハウスメーカーでは図面をはじめとして契約の意思決定をしていただけるような材料を揃え切らないといけません。そこまでしても契約に至らなかった時にはかなりショックでした(笑)。注文住宅のように「商品が見えていないものを買う」ときは、8割が営業の担当者で決まると言われています。恋愛の如く営業がお客様の心をしっかり掴めているかどうか、それができなければハウスメーカーの営業とは言えません。

――大変なぶん、ハウスメーカーの営業はその人間力が非常に鍛えられそうではありますね。ちなみに、今サンリーホームは注文住宅を扱っていませんが、注文住宅が欲しいお客様に対してサンリーホームができることはありますか?

小林専務:まずは土地の有無を聞いて、土地がない人なら良さそうな土地を紹介します。仮に当社で土地をご契約いただけた場合には、その先のハウスメーカー探しもお手伝いしますよ。例えば、地元で性能のいい住宅を建てている中堅どころの工務店につなぐことも可能です。正直、そういうところを選べば大手より格段に安く建ちます。そうやってお話ししているうちに、建売や中古という選択肢もアリだと思うようになれば、それはそれでご紹介します。

――建売や中古だと、新築の注文住宅より一千万以上差が出たりしますもんね。

小林律子さん:お客様の予算に合わせて、こちらができることを色々と選べるのは本当にいいところだと思います。

その「建築愛」に、不動産会社という選択を!

――就職活動中の学生や、転職を検討中の方にメッセージはありますか?

小林律子さん:長く建築や住まいの仕事に携わりたい人にこそ、ぜひ「不動産会社」 を視野に入れて欲しいなぁと思います。建築って基本的にハードな仕事なんですよ。それでも好きな人は本当に好きだからこの仕事をやるんですが、お客様との打ち合わせが基本にあるハウスメーカー業界だと、土日に出社するのは当たり前で。独身の時はそういう会社で休日出勤も徹夜もしながら働くのも楽しいんですが、現実問題、子供産んだら続けにくいです。そこが壁になって建築の仕事そのものを諦めちゃうのはもったいないので、建売を建てる建築士やそれを売る営業として仕事を続けることで、バランスを取りながら両方充実させることができるのではないかと思っています。

――律子さんはまさに今、子育てをしながらそういう働き方をされていますね。田中さんはいかがですか?

田中さん:僕は、当社くらいの規模の会社って結構面白いよってことを伝えたいです。意外かもしれませんが、大きくて歴史のある会社になればなるほど制約が増えるんですよ。先代が作ってきた施工図があって、それに沿って建てていくし、材料もいくつかの中から選ばないとダメっていう決まりがあって。もちろん、それがブランドになっているので、良いこともたくさんあるのですが。一方当社はこれから歴史を作っていく段階です。建てる側からすればそこがすごく面白いところです。古い会社でも規模が小さければ結構そういう会社もありますから、ぜひ有名無名に囚われず楽しく働けそうな会社を探してみてください。