今回の企画では、新入社員のよくある悩みをピックアップし、「もしこれを相談されたら専務はどう答えますか?」をひとつずつ聞いてきます。人生全般に応用できる「考え方」にまで踏み込んだ回答、新人以外も必読です。

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(プロフィール)
小林 和晃(Kobayashi Kazuaki)取締役専務/採用責任者。高校卒業後、大工としてキャリアをスタート。創業者である社長と共にサンリーホームを牽引。

新入社員、最多の悩みは「残業」。1年目から長時間勤務になったらどうする!?

――今回は、ビズノートが全国の社会人1年目の男女100人を対象に実施した「仕事の悩みに関するアンケート調査」を下敷きに、上位に挙がった悩みを一つずつ専務にぶつけてみる企画です。

小林専務:「こういう悩みをもし当社の新入社員が私に相談してきたらどう答えるか」、ということですよね。

――そうです!仮定の話にはなりますが、よろしくお願いします。早速ですが、悩みの1位に挙がっていたのが「残業」に関するものでした。残業して当たり前の雰囲気、定時に帰りづらい、慢性的に人員が不足している……専務ならこの悩みにどう答えますか?

小林専務:入社1年目ですから、そもそも業務に慣れていなくて長時間勤務になる面はあると思うんですよね。とはいえ、相談を受けたらまずは、今やっている業務を割り出してみよう、どんな業務をしているか教えて、と言いますね。それから日報を再チェックして、どういった業務に注力しているかを確認します。それをしながら、果たしてそれは今行うべき業務か、重要度は高いのかを一緒に整理します。もちろんこうした作業は直属の上司や上長と一緒にやってもいいのですが、上司と話しづらいのであれば私が一緒に整理の基準を確認します。残業するべき業務なのか、翌日に回せる業務なのかも考えるでしょうね。

――仕事の優先順位を自分で判断できていなくて残業になっているケースも多そうですよね。

小林専務:そうですね。ただ最初に申し上げた通り、業務スピードや効率は、熟練社員の半分もしくは10分の1くらいかもしれません。単にそのせいで残業になっているのであれば、本人の努力でスキルを上げることで自然と定時に帰れるようになると思います。

――残業に対するそもそもの捉え方についてはどう思われますか?

小林専務:「石の上にも三年」という言葉がありますが、何事も最初の三年は下積み期間としていろんな苦労をしてみたらいいのでは、とは思います。それに、「三つ子の魂百まで」、つまり三歳までに覚えたことは百歳まで忘れないとも言いますので、入社して最初の三年という大事な過程をいかに自分の成長に繋がるように楽しんで過ごせるかはとても重要だと思います。ただ、だからと言って残業したらいいということでもなく、当社としてもあまり長時間の残業にならないようにしています。1日の上限は夜8時半までですし、月間の上限、年間の上限も設けています。仕事と家庭、あるいは自分の時間との両方が充実してこそ、両方が生き生きしてくるものだと思いますしね。

――メリハリをつけつつ、ということですね。また、そもそも「残業に対してどういう考えを持った会社か」が事前にわかるとミスマッチも減るかもしれませんね。いまだに上限など気にしない会社も存在しますから。

小林専務:それはそうですね。残業についての考え方や方針は会社ごとに異なると思いますので、面接を受ける際や入社前に、個別によく調べるといいと思います。

人間関係がうまくいかない、上司や先輩に怒られる……注視すべきは「自分がどう行動するか」。

――次のお悩みにまいります。「人間関係がうまくいかない」、これについてはどう思われますか?

小林専務:うーん、どこでもありますよね、この悩みは。私としては、相手が上司であれ先輩であれ、人間関係というものは「相手を変えることはできない」が大前提に来ると考えているんです。つまり、「人間関係がうまくいかない」と悩んでいるということは、「相手が自分の意に沿わない」ことで悩んでいるとも言えますし、要は相手を否定しているんです。お互いに相手を変えようとしているときに、うまくいかなくなるんだと思います。

――なるほど……深いです。

小林専務:だから、ここはキッパリと、「相手は最善を尽くしている」と思っていた方がいいと思います。そこに対して自分はどうできるかと、自分のマインドを変える方向で動かなければうまくいかない。どうしてもうまくいかない人は、相手に対して笑顔で毎日挨拶しているか、うまくいかない部分を伝えたり話し合う努力をしてきたか、そういう基本的なところも見返してみるといいかと思います。これは友人関係でも夫婦関係でも、いろんな場面で同じことが言えます。相手を変えようと思うといろんなところでストレスになります。

――「相手を変えようと思わないこと」、肝に銘じたいと思います。では次のお悩みに行きます、「いつも上司や先輩に怒られる」。これはどう思いますか?

小林専務:。これは……なんで怒られているのかわからないのであれば、怒られる要因を考えないといけませんよね。ただ、上の立場の人間としてみれば、「怒る」ってあんまり必要のない行為にも思うんです。例えば社員が遅刻をしてきたとします。遅刻の言い訳はいくらでもあると思うんですが、単純に考えれば、会社に来たくなかったから遅刻したんですよね。取引先に電話をするのが億劫だなとか。単に寝坊して遅刻したとしても、それはそれで、寝坊の原因がある。遅くまでゲームをしていたとか、本を読んでいたとか。そういうことなら、まだその人にとって仕事が生活の中心にない、仕事を確立していく段階にないということになりますよね。そこに対して「怒って」も、別に何も解決しませんよね。

――専務は怒るのではなく、原因を分解して指摘していく方が解決につながりやすいという考え方ですね。

小林専務: そうですね。あと、新入社員は「怒られた」と思っているかもしれませんが、「怒られた」と思っているだけで、ちょっと指摘されただけとか、軽い指示や指導だった場合もあります。もっと言えば、上司が家庭で奥さんと喧嘩していて機嫌が悪かっただけかもしれませんし。あまり何もかも自分のせいにして気に病まないことも大切です。

――それを思えば、「怒られた!」とただ萎縮するのは損な気がしてきますね。

小林専務:「上司に何があったのか?」まで新入社員の立場で考えられたら、それはすごいことです。一つの例ですが、豊臣秀吉は織田信長の意を全て受け入れたことで、気に入られ、トップに引き上げられて天下を取れました。同じように、会社でも、上司、役員、社長の思いまで全部汲み取って動ける人がいれば、すぐに成長してすぐに部下を持つ立場になるのかもしれません。

――秀吉級の新人が入ってきたら、上司や先輩の方が怯んでしまいそうです(笑)。

やりがい発掘=「自分の深掘り」×「世界を広げる」

――最後の悩みです。「仕事にやりがいを感じない」。こう相談されたら何と答えますか?

小林専務:あぁ、これも新卒が陥りがちなことかもしれません。そういう時はぜひセルフカウンセリングをすることをお勧めします。

――セルフカウンセリングって何ですか?

小林専務:「自分は今何をしているのか」「何のためにしているのか」「なぜしているのか」「誰のためにしているのか」。そういうことを自分に問いかけて一つずつ噛み砕いていく作業です。当社の社員がひとりでうまくできない場合は一緒にその問いについて考える時間を設けてサポートします。

――本人の奥深くにある動機にたどり着くまで、自分を掘ってみるということですね。

小林専務:そうです。仮に、働く理由が「お金が欲しいから」だったとすれば、「他にも仕事はいろいろあるのになぜこの仕事を?」と問うてみる。「不動産の知識を身につければ家族の役に立ちそうだから」なのであれば、「知識をつけるためにどうしたらいいか」と問うてみる。「たくさん経験を積んで、たくさんの成約をとって、資格もとる」ことで知識をつけられると本人が思うなら、すぐにでもその行動に向かっていけばいい。誰でも、目標を見失って目の前が真っ暗だからもがくんです。でもそこに一筋の光があればそこに向かって一生懸命に進みます。その光が見出せない時にセルフカウンセリングをしてみるといいと思います。一度しかない人生です。自分の見出した光、目標に向かって行動すれば悩みもいずれ解決するのではないでしょうか。

――そうですよね。……あの〜、最後に追加で、「上司・先輩側の悩み」を、私から相談をさせていただいてもいいでしょうか。

小林専務:はい、どうぞ(笑)。

――ありがとうございます(笑)。最近の新卒を見ていると、「自己肯定感を高く維持していないとやりがいが持てない」タイプが多い気がします。そういう人は、とにかく「褒められたい」。S N S世代だからかもしれませんが、すぐ社内で先輩や上司からの「いいね!」を欲しがるんです。別に悪いことじゃないんですが、本当はもっとその先にある「お客様の成果につながった」とか、「お客様のその先にいるお客様に貢献できた」とか、より深い意義が仕事にはあるはずです。それなのに、社内で褒められることばかり考えてしまっていると、いつか成長に限界が来てしまう。専務も同じことを思うことはありますか?

小林専務:なるほど……。うちの子供も、何かしたら褒めて褒めてと言ってきますし、褒められなければ泣きます、一緒ですね(笑)。人間って承認されたいんですよね。だからまず承認してあげることが大事なんでしょうけど、承認した上で欠点を指摘してあげること。承認と指摘を繰り返すこと。指摘されたら一度はショックを受けるかもしれないし、大泣きするかもしれないけれど、改善して成長できれば本人の喜びになっていくはずですし、並行して先ほど申し上げたような「目的」をしっかり見つけてあげればいいのではないかと思います。

――「社内」から「社外の広い世界」へと視野を広げさせるにはどうしたらいいでしょうか。

小林専務:どこかに連れていってあげて、リアルを体験させてあげたらどうでしょうか。今の新卒世代はネットやSNS上で情報収集することは得意かもしれませんが、リアルな触れ合いや関わり合いが苦手かもしれないので、そこが開かれるように上司として働きかけてあげるのも大事だと思いますよ。

――言われてみれば確かに、「外に出ていく」「直接触れ合う」ことへの苦手意識は世代間ギャップとしてあるのかもしれません。そこに配慮しながら働きかけると効果がありそうです。今日はありがとうございました!